小売業界を激変させる、今アメリカで急成長しているEC発ショールームストアとは?
こんにちは。spice life代表のヨシカワです。
3月2日にtmixショールームをオープンしましたが、今回はその根底にあるこれからのトレンド、 ECネット企業のショールーム型ストアの取り組み(ECオムニチャネル)がいかにいままでの店舗と違い、これからの店舗づくりを変えていくか、について書こうと思います。
この話ってオムニチャネルの話でもあるんですが、リアル企業が取り組んでいるオムニチャネルと、ネット企業のオムニチャネルは中身が全然違うんですよね。リアル企業のオムニチャネルの話は新聞でもしょっちゅう出てくるほどになっていますが、このECネット企業のショールーム型ストアの取り組みは日本ではほとんど紹介されていません。
実はこの先進的な取り組みでアメリカのECスタートアップのいくつもが成功しだしています。 代表的にはアパレルのbonobos(ボノボス),メガネブランドのWarbyParker(ワービーパーカー)という企業です。
弊社サービスtmixはオリジナルTシャツのオンラインサービスなので扱う商材が近いbonobosの取り組みを取り上げます。 bonobosは2007年創業(spice lifeと同じ年に創業!)、ネットショップから始め今はリアルショップ(bonobosガイドショップ)をサンフランシスコやニューヨークなど14店舗展開しています。この店舗に実はリアル企業の店舗にはないネット企業ならではの先進的な特徴があります。
店舗の先進的な特徴とは?
それは、
在庫を持っていない
店舗で買う場合もネットショップで決済
集客はネットから、と割りきっている
というところです。またその特徴により以下のメリットが出てきます。
お客様満足度、信頼度の向上
店舗コンバージョン率のUP(非購買者数の減少)
家賃/店舗運営のコストを最少化
店舗販売の収益性をあげられる
出店スピードを圧倒的に早めることができる
また副次的に、 集金の必要がない(現金管理の必要なし) っていうこともあります。
以下でもう少し詳しく説明します。
1. 在庫を持っていない
店舗には商品のラインナップは展示していますが、そこで販売するための在庫がありません。 (なので一般的にショールーム型ストアと呼ばれている。)
お客様は、そこで商品を見たり試着したりできますが、商品は持ち帰りできないのです。
その場で商品を持ち帰らない
え、商品持ち帰れないんだ、と思いますがよく考えると、実際持ち帰れなくて困ることってすぐに利用したい場合だけで、後日送られて来たほうが荷物にならないです。 色んな所で買い物をして手荷物が増えた時の邪魔さがなくなる。カフェで休憩するときも邪魔にならないし、電車の網棚に置き忘れるなんてこともなくなる。
ちなみに、bonobosでは当日発送、最短翌日着なので結局購入して翌日には着れるんですよね。 「持って帰るの面倒でしょ?家に送っとくよ。明日には届くからさ。」のようなイメージで気軽さがあるのも気にならない理由かもしれません。
少し先の未来では、ショッピングに出かけても持ち帰らないのが当たり前になるかもしれません。
だから店舗在庫管理が必要ない
在庫の管理が必要ないということは店舗側にとってかなり大きなインパクト。
商品出しや陳列整理などの作業がなくなる。つまり接客のみに集中できる。 ショップ販売員の日常業務の過半は品出しや商品整理など店内物流業務らしいです。 これがなくなる。結果、店舗運営コストが下がる。
もちろん在庫管理スペースも必要ない。
接客スペースの拡大、あるいは店舗面積の効率化に。坪単位売上が上がることが期待できます。
展示もシンプル
全種類全サイズを置くわけでなく、商品とサイズの組み合わせで分かるようにしています。 展示点数を少なくすることでごちゃごちゃしたイメージをなくし、スッキリとした雰囲気の中で自分たちの商品や世界観を見てもらうようにしています。またbonobosガイドと呼ばれるスタイリストが接客を丁寧に行っています。お客様とのつながりを大事にするため、基本予約制です。bonobosガイドはお客様に飲み物をサービスし、お客様は試着はもちろんスタイリストと座って飲み物を飲みながら商品を選べるんです。
2. その場で買う場合もネットショップから買う
見たり試着したりして欲しくなった場合、店頭のタブレット端末を使って商品を買うのですが、 ネットショップからカートに入れて買います。 自宅でネットで買う時と全く同じように買うのです。 (もちろんその場で買ってもらうために、いくつかのショールームストア特典を用意しています。)
お店にはレジもないし、スマホ決済のSquareのような端末で決済もしません。
なので集金の必要がない
現金も使わないので、現金管理もない。これでかなり店舗運営がラクになる。 お金目当ての犯罪にあうなどのリスクも下がる。
購買情報がお客様のアカウントに紐付けられる
従来の店舗では顧客のアカウントと購入情報をひもづけることをしていません。 企業側から見ると、どんな人が何を買っているかはよくわからないのです。 なので商品戦略に活かしたり、その後のお客様へのきめ細かい対応ができませんが、 これがリアル店舗で買ったとしてもできるようになります。
3.集客はネットから、と割りきっている
検索、ソーシャルメディア、ネットブランディングなどとにかくネットを中心として店舗に来てもらうようにしています。(ECサイトから実店舗に誘導するウェブルーミング)。 通りがかりのひとをターゲットにしていません。
なので家賃が安くて済む
路面店、目抜き通りになくて構わないのです。一本奥に入った通りの2階で可能。 その代わりに店舗にお客様を楽しませる仕掛けを作り、自然にネット口コミが拡散されるよう工夫しています。いかにお客様とつながっていくのか(ロイヤリティよりエンゲージ)が重要であり、そのために何を行うかを考えています。
これらの特徴があるとどうなるか?
店舗運営コストが大幅に下がります。そうなると、損益分岐点が下がり、利益を早期に出すことが可能になります。 そして出店スピードを圧倒的に早めることができるようになります。
以下は出店スピードが変わることでどう変わるかを社内でシンプルにシュミレーションした資料の一部を抜粋したものです。
またこのショールームストアのモデルであれば、店舗物流も最小限、店舗教育は接客中心、現金を扱わない、などから海外進出のコストやリスクも低くなります。
またコストが下がる分、販売価格も下がる、なども起こるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
このショールームストアのモデルがあることで、チャレンジできるスタートアップ、アパレルブランドや他ジャンルのお店が増える予感がします。 また従来のリアル店舗のスピード感ではなくネットの世界のようなスピード感で店舗が一気に出現し人気化する、ということもあり得ます。
つまりこれからの未来では思いもしないブランドがネットから出現しそこから現実の世界をガラッと変えることが起こるのです。リアル企業でネットに弱くこのインパクトを理解できないところはあっという間に衰退してしまうかもしれません。これがアメリカだけでなく世界中で起こります。
日本でもEC発ショールームストア(ECオムニチャネル)は今年爆発的に増え数年内に主流になるでしょう。 アパレルショップは旗艦店を除いて全部ショールームストアになる、家電量販店もそうなる、雑貨屋さんも、家具やさんもアクセサリーやもどんどんそうなる、路面じゃなくてもいいし、目抜き通りじゃなくてもいい、GoogleMapで辿り着ければいい、そうなれば今までお店がないところにもお店ができる、結果、街のありかたが変わる、そんな未来がすぐそこに来ているかもしれません。
spice lifeがある渋谷も数年後は、EC発ショールームストアだらけになったりして^^
ではまた。spice life代表のヨシカワでした。
3/15追記:ちなみに、この取り組みはもちろんspice lifeでも進めています。このトレンドを知り興奮し一緒に世界を変えたい人いれば是非連絡ください。エンジニア、ディレクター、デザイナー、ストアディレクターいろいろな職種で募集中です。ヨシカワへFBメッセを送るか、メールcontact@spicelife.jpまで。